第1セクション: 発生

1990年2月24日、ヤンセンはオランダの全国紙『De Volkskrant』の隔週のコラムにおいて、国土の約4分の1が海抜0m以下というオランダにとっては海水面の上昇が非常に深刻な問題となっていることを指摘しています。これに対する解決策として、ヤンセンは「黄色いポリ塩化ビニールのチューブとサテーの串、そしてテープ」で組み立てた新種の生物を「建造」することを宣言しました。この生物が海岸を永久に歩き回り、大量の砂を踏み崩すことによって海岸線を守る砂丘の形成を促進する、というのがヤンセンの構想でした。

これがストランドビーストの起源となります。ヤンセンはその後28年間にわたって、ストランドビーストの建造、解体、修正に取り組み続けてきました。発生のセクションでは、ヤンセンの当初のビジョンを示すスケッチやプロトタイプ、そしてストランドビーストの材料となった素材が展示されています。

「Beach Roamers」 -『De Volkskrant』に掲載されたコラム
(1990年)
これは、『De Volkskrant』に掲載されたコラムの切り抜きです。海面上昇からオランダの海岸を守るために、ストランドビーストを生み出そうという、ヤンセンの最初のプランが示されています。ヤンセンが描き出しているのは、「黄色いプラスティックのチューブ、サテー(東南アジアの串焼き料理)の串、それにテープを使って」組み立てた新種の機械生物です。「風からエネルギーを取り込むので、食物は必要ない」この生物が、海岸線を止まることなく永遠に歩き回り続け、砂をやわらかくしていくことによって砂丘の形成を促進します。ヤンセンはこのコラムの中で、構想通りのプロトタイプを1年間で2体作成することを約束しています。そして、「秋には海岸に彼らを放ちたい。そうすれば秋の嵐を活用することができるから。1年もたてば、オランダの海岸線は全く違った姿を見せるようになるだろう」と書いています。
テオ・ヤンセンのアトリエ
2018年
オランダのデルフト近郊の町イペンブルフの工房を再現。毎年夏になると、ヤンセンはこの工房でストランドビーストの新種の開発に取り組みます。アトリエの展示の中でも注目すべき展示物が、アタリのコンピューターです。これは、ストランドビーストの祖先とも呼ぶべき「ライナー スティック クリーチャー」を生み出すためにヤンセンが使用したものです。ライナー スティック クリーチャーは別名「アニマリス リニアメンタム」とも呼ばれており、発生してから今までずっと、このアタリのコンピューターの中だけで生き続けています。

 
*全画像およびビデオ:©Media Force