シンガポールのアートサイエンスミュージアムの夜間ライトアップシンガポールのアートサイエンスミュージアムの夜間ライトアップ

サウンド

ミニマリズムは音楽にも大きな影響を与えました。ミニマリズムの音楽は、時に質素で簡潔な、時に壮大で幻想的な表現の中で、音の本質以外の要素を削ぎ落とし、音そのものを目の前に現前させる音楽です。

ミニマリズム音楽の源流は1800年代後半にまで遡ることができますが、無音状態も音楽の一部であるということを明確に示したのは、アメリカの作曲家ジョン・ケージの前衛的な実験音楽でした。ミニマリズム音楽が脚光を浴びた1960年代は、視覚芸術におけるミニマリズム運動が興隆した時期でもありました。ドナルド・ジャッドやフランク・ステラが視覚芸術における「盛期ミニマリズム」を代表する人物だとすれば、音楽においてはテリー・ライリーやスティーブ・ライヒがそれにあたります。

彼らの作品は、本ミュージアムの音楽展示スペースであるサウンドルームで、主要な作曲家や音楽家40人の作品を集めたプログラムで聴くことができます。

展示予定: 作曲家40名: テリー・ライリー、スティーブ・ライヒ、フィリップ・グラス、ラ・モンテ・ヤング、トニー・コンラッド、エリアーヌ・ラディーグ、ジョン・ケージ、エリック・サティ、ヨハンナ・ベイヤー、ダフネ・オラム、池田亮司、アルヴァ・ノト、ヤナ・ウィンデレン ほか

展示作品
サウンドルーム

サウンドルーム

音楽におけるミニマリズムに底流する思想では、原点へと回帰すること、無駄な要素を切り詰めること、音の本質(あるいは音の不在)を現前させることに意義が見出されます。限定されたミニマルな音素材のみで作られた音楽こそ、シンプルさの中に美が宿り、時に思わぬ複雑さを垣間見せることを証明するものです。時に質素で簡潔な、時に壮大で幻想的な表現を見せるミニマリズム音楽は、一貫したパルスや、段階的な変容、シンコペーションから元のリズムへの回帰、ドローンの持続、フレーズの反復などが共通する特徴と言えます。

本ミュージアムのサウンドルームでは、20世紀前半に音楽界にモダニズムの幕開けをもたらした前衛音楽家たちに始まり、1960年代から70年代にかけて同時代の視覚芸術の作家らとともに「盛期ミニマリズム」を牽引し、ミニマリズム音楽を大きく発展させたテリー・ライリー、スティーブ・ライヒ、フィリップ・グラスなどの作曲家、さらに、20世紀後半に現れた新たな潮流に至るまで、ミニマリズム音楽の歴史を一望する展示を行います。今やミニマリズムの古典となっている有名作品だけでなく、それらの先駆けとなったミニマリズム初期の実験的な作品や、新世代の作品までが展示されます。ミニマリズムの運動は過去の遺物となるどころか、現在でも新たな実験により活発に進化を続けていることが理解されるでしょう。

サウンドルームでは、視覚情報をシャットアウトした静寂の支配する空間に座り、新しい時空の感覚をもたらす音のフォルムに浸ることができます。

指揮者のチャールズ・ヘイゼルウッドは、「聴衆は普段の音楽の聴き方を一度忘れて、あらゆる期待を捨てて永遠の現在に身をゆだねることが必要である」と説いています。"

サウンドルームでは、ウェズリー・ゴートリーとホーナー・ハーガーが執筆、ニーナ・アーンストとエイドリアン・ジョージが編者を務めた解説冊子を配布します。冊子では、今回サウンドルームで行われる3つのプログラムと、登場する作曲家40名の作品が紹介されています。

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