シンガポールのアートサイエンスミュージアムの夜間ライトアップシンガポールのアートサイエンスミュージアムの夜間ライトアップ

反復

反復

米国でミニマリズムが最高潮に達した1950年代から1960年代にかけて、美術評論家やキュレーターがミニマリズムとは何かというルールを確立しました。そしてそれ以降、ある作品がミニマルか否かを決定する際にはそのルールがあてはめられるようになりました。シンプルで幾何学的な形状、必要最小限の素材、色数の抑制、反復などはすべて重要な要素でした。

全く同じ造形物などが反復する要素などは、たいてい台座や展示ケースなしでフロアに直接設置されました。本ギャラリーの展示からもわかるように、「反復」の使用は他のメディアにも見られます。例えば、アーティストがシンプルな形状、ボリューム、ラインなどを追求する版画や写真などです。「反復」はパフォーマンスにも見られます。ダンサーが従来の技術を排し、自然な動きを反復することで、独特のボディランゲージに昇華させるのです。

出展アーティスト: シモーヌ・フォルティ、アンナ・ハルプリン、ジョーン・ジョナス、ドナルド・ジャッド、譚平(Tan Ping)、イヴォンヌ・レイナー、王剑(Wang Jian)
注目の作品
「無題(6個の箱)」 by ドナルド・ジャッド(1974)
オーストラリア国立美術館(オーストラリア、キャンベラ) © Judd Foundation/ARS Copyright Agency, 2018

「無題(6個の箱)」 by ドナルド・ジャッド(1974)

真鍮
インスタレーション: 101.6 x 736.6 x 101.6 cm

ドナルド・ジャッドは、米国のミニマリズムにおける最も重要なアーティストです。彼の作品は、剥き出しの素材、シンプルな形状、反復を使うという点でミニマリズムを象徴しています。この彫刻作品は、15センチ間隔に設置した6つの同じ形の真ちゅうの箱で構成されており、ジャッドの最も重要な作品の1つです。シンプルな形状を反復することで、ギャラリー内に視覚的なリズムを創り出し、鑑賞者が作品の周りを歩き回るよう促しています。わずかに光が反射する作品の表面には、歩いている鑑賞者の身体の影や、作品が置かれている空間の気配が映し出されます。台座すら必要ない作品は、設置される建築物にも変化を与えるとともに、鑑賞者に作品と展示スペースとの関係性について考えるよう挑んできます。

ジャッドの彫刻作品は他にも何点かナショナル ギャラリー シンガポールで展示されています。

「60 x 60」 by 譚平(Tan Ping)(2010)
10刷、アーティスト提供

「60 x 60」 by 譚平(Tan Ping)(2010)

紙本木版
14ピース 各60 x 60 cm、6ピース 各60 x 120 cm、2ピース 各60 x 180 cm

譚平(Tan Ping)は中国マキシマリズムの代表的アーティストです。多くの中国のマキシマリズムのアーティストと同様、彼も作品制作に精神性の深いアプローチをよく取ります。今回展示されている木版画の制作にあたり、譚平(Tan Ping)は底なし沼を歩いているかのような感覚を記録しています。構図上の黒いエリアは、平面というだけでなく深みにはまる場所でもあるのです。彼は、黒い平面とそこを通る白い線の間には「無」や「空」に通じる無限の空間が存在すると感じています。今回の展示18で繰り返されるテーマです。

「Various」 by 王剑(Wang Jian)(2009)
3刷のうちの初刷とアーティスト保管用の試し刷り、アーティストおよびPIFO Gallery(北京)提供

「Various」 by 王剑(Wang Jian)(2009)

アーカイバルペーパー、ジークレープリント
30 x 22.5 cm

東洋思想、中国のマキシマリズム、西洋の影響を受けた、コンテンポラリーアーティストの王剑(Wang Jian)による抽象ミニマル作品です。1960年代以降のミニマリズムによくみられる反復に倣い、王剑(Wang Jian)は日常生活を題材にした写真を何百枚も撮影しています。単純な動きや日常の素朴な美しさが彼のインスピレーションになっています。彼の写真は、影、窓から入ってきた光がつるりとした壁に当たる様子、誰かの首筋から肩にかけての曲線、無地の壁に対峙するカーテンのかかっていない窓といった一瞬一瞬をとらえています。日常生活を繰り返し撮影するという王剑(Wang Jian)の儀式によって、一見シンプルに見える平凡なイメージの中に崇高さが生み出されます。

ミニマルパフォーマンス
「Trio A」 by イヴォンヌ・レイナー(1966/1978)

ミニマルパフォーマンス

ミニマリズムは、ビジュアルアートのトレンドになったのと同様に、音楽やダンスといったパフォーミングアートの世界にも大きな影響を及ぼしました。1960年代には、伝統的なダンス技術を排して無駄を省いた、シンプルなアプローチをするダンサーが現れました。アンナ・ハルプリン、イヴォンヌ・レイナー、シモーヌ・フォルティといったミニマルダンスの先駆者は、当時確立されていた、振付師マーサ・グレアムなどに代表されるダンスの形式に反感を抱いていました。グレアムのスタイルは技術的で表情豊か、そして物語的なものであり、これらはすべてミニマルダンサーが拒否するであろうものでした。そうしたスタイルに代わって生み出されたのが、基本に立ち返り、より自然主義的な動きを重視したダンスへのアプローチでした。1960年代の重要なダンス作品の大半は、イヴォンヌ・レイナー、ロバート・モリス、アンディ・ウォーホルが1962年に立ち上げたジャドソン ダンス シアターで上演されました。ジャドソン・ダンス・シアターは、ミニマルダンス発展の試験場として、ロバート・ラウシェンバーグ、ロバート・モリス、アンディ・ウォーホルといった多くの有名アーティストが集う場として、その影響力は大きくなりました。

上映予定:
- 「Trio A」 by イヴォンヌ・レイナー(1966/1978)
- 「Wind」 by ジョーン・ジョナス(1968)
- 「Solo No. 1」 by シモーヌ・フォルティ(1974)
- ドキュメンタリー作品からアンナ・ハルプリンに関する部分を抜粋、「Artists in Exile: A Story of Modern Dance in San Francisco」by オースティン・フォーボード、シェリー・トロット(2000)