シンガポールのアートサイエンスミュージアムの夜間ライトアップシンガポールのアートサイエンスミュージアムの夜間ライトアップ

素材

素材

作品をミニマリズムと定義する場合、素材の選択は極めて重要な要素でした。多くのアーティストは、手に入りやすい自然のものや有機物を使用し、時には屋外に作品を創ったり、自然の要素をギャラリーに持ち込んだりすることもありました。このような自然や土地を利用した芸術作品の大半は長くはもちませんが、ミニマリズムの美学に限り有る自然の儚さを持ち込みました。

アーティストの中には、石膏、ガラス、金属、家庭用のレンガなどの工業素材を選ぶ人もいました。彼らは、素材を別の何かの象徴やストーリーを伝えるために使うことはしませんでした。どんな素材でも、単にそのもの自身として使用したのです。岩は単なる岩であり、プレハブの立方体は純粋にただの立方体でした。アメリカのミニマリズムの画家であるフランク・ステラ(Frank Stella)が1964年に言ったように「あなたが見ているものは、あなたが見ているもの」なのです。

展示予定: イェッペ・ハイン(Jeppe Hein)、リチャード・ロング(Richard Long)、メアリー・ミス(Mary Miss)、シュウ・ホンビン(Zhou Hong Bin)
展示作品
Battery Park Landfill メアリー・ミス(1973年)
アーティスト提供

Battery Park Landfill メアリー・ミス(1973年)

BCプリント(紙)
3枚の写真、52.5 x 80 cm(各)

メアリー・ミスは、1960年代以降公共スペースに印象的な彫刻や建築物を創作してきました。彼女はドナルド・ジャッド(Donald Judd)と同時期に活動しましたが、ミュージアムやギャラリーで作品を展示することは極端に稀でした。その代わり、見る側が空間を体験できるように大きな屋外彫刻を創作してきました。「Battery Park Landfill」という作品で、彼女は本質的に形がないもの、すなわち空気の塊を強調するために素材を使用しました。1970年代、ニューヨークの巨大オープンスペースのひとつに、後にバッテリー パーク シティとなる埋立地がありました。ミスは、この場所を使って約15メートル間隔で5つの看板のような構造物を作りました。各構造物の内側はきれいな円形に切り取られていて、円の高さが構造物を追うごとに低くなっていきます。このギャラリーにある3枚の写真は特定のアングルから物体を写しており、空気の塊が地面に向かって沈んでいく様子を表現しています。

その他の展示:
- Portable Window(1968年)

Ring of Stones リチャード・ロング(1982年)

Ring of Stones リチャード・ロング(1982年)

石のインスタレーション: 1068cm(直径)、258個の石

1960年代以降、イギリス出身アーティストのリチャード・ロングは自然の中で行う長い歩行を中心とした活動のパイオニアで、ランドアートの最先端に存在し続けています。この記念碑的な彫刻は彼と風景との関わりの一例であり、自然のサイクルや野生のリズムを思い起こさせます。4つの同心円上に258個の石が置かれ、今回の展示の他のエリアにあるサークルと反響しています。

「Ring of Stones」は、ナショナル ギャラリー シンガポールに展示されている1972年の「Circle in the Andes」に始まる、遥か遠くの自然とギャラリーでロングが創作してきた数多くのストーン サークルの中で最大のもののひとつです。スレート、石、木、松の棘を素材として、彼のサークルはサハラ、エクアドル、モンゴル、アイルランドの自然風景の中に見られます。ロングは自身の作品について「自然のパターンと、人間の形式主義(線や円などの抽象的思考)の間でバランスを取るものです。私の人間的な特徴がこの世の自然の力やパターンと出会う場所です」と説明する。

1993年国際的エキシビション プログラムにより購入、クイーンズランド アートギャラリー所蔵

その他展示中の写真作品:
- Tsunami Coastline Walk(2013年)
- A Bend in the River、中国(2010年)

Moving Neon Cube イェッペ・ハイン(2004年)
アルケン近代美術館(デンマーク)所蔵

Moving Neon Cube イェッペ・ハイン(2004年)

ネオンチューブと変圧器、70 x 250 x 250 cm

ロバート・モリス(Robert Morris)とドナルド・ジャッドの彫刻の立体的な形状や、ソル・ルウィット(Sol Le Wit)のコンセプチュアルな作品からインスピレーションを得たイェッペ・ハインの彫刻は、遊び心とアイロニーに溢れた、しかし意義深い1960年代と1970年代のミニマリストの静的な形式の再解釈です。暗くした空間で、ネオンライトで作られた一連のキューブ(典型的なミニマリズムを模倣した形状)を断続的に明滅させることで、フロア上を回転しているように見えます。複雑な素材と電気、そして彫刻の「パフォーマンス」は、ミニマリズムの美学と矛盾しているように見えながら、同時にキューブによってミニマリズムを最も象徴したものになっています。

Still • Life(Various) シュウ・ホンビン(2015年)
アーティスト提供

Still • Life(Various) シュウ・ホンビン(2015年)

DibondにCプリント、90 x 90 cm(各)

ミニマリズムとみなされるアート作品についてよく引き合いに出される基準の1つに、シンプルな幾何学模様の反復があります。例えばドナルド・ジャッドの彫刻やカーメン・エレーラ(Carmen Hererra)の抽象画で繰り返し用いられる形式です。シュウの創るこの幽霊のような写真の始まりは、シンプルな球と柱からより複雑な形状を作る小さな石膏の彫刻でした。その後彼女は写真撮影に取り掛かります。写真を撮影すると、シュウは元の彫刻を破壊します。彼女のミニマリズムの作品は、デジタルで再現された写真上の薄いインクレイヤーに残る記録だけです。これらの作品は重さや堅さといった感覚を伝えるとともに、過ぎゆく時間の一瞬を切り取るものもでもあります。写真に記録された短命の物体が、正反対に写真画像そのものの永遠性のように思えてくるのは不思議なことです。