シンガポールのアートサイエンスミュージアムの夜間ライトアップシンガポールのアートサイエンスミュージアムの夜間ライトアップ

ミニマリズムからマキシマリズムへ

ミニマリズムからマキシマリズムへ

ミニマリズムとは通常、1960年代に始まった西洋のモダンアートのムーブメントを指します。しかし、そのルーツはアジアの精神的、哲学的概念に遡ることができます。

1915年に、おそらく初の真のミニマルアート作品を創作したのが、ロシア人アーティストのカジミール・マレーヴィチです。マレーヴィチの代表作は、79.5cm x 79.5cmの白の背景に黒の正方形を配した「黒の正方形」です。要素が少なくシンプルにも見えるこの作品が、モダンアートに革命を起こしました。最もシンプルな表現こそが、最も強いインパクトを与えることが可能であり、形式の不在は時に存在よりも力強いことを示したのです。

「黒の正方形」は、マレーヴィチが東洋哲学に興味を持ったことがきっかけで制作されました。米国のミニマリズムと東洋の精神性のつながりは、1950年代にニューヨークで禅思想について公開講義を行った日本人仏教学者、鈴木大拙にまで遡ることができます。ミニマリズムに影響を与えたアーティストたちが参加したことで、同世代のアーティストの間で禅の教えへの関心が高まりました。

今回の展示では、禅に見られるミニマリズム、中国のマキシマリズム、アジアのコンテンポラリーアートを、西洋のミニマルアートに多い幾何学的な作品と対比して探求していきます。

出展アーティスト: 張羽(Zhang Yu)

注目の作品
「Ink Feeding 20150506」 by 張羽(Zhang Yu)(2018)

「Ink Feeding 20150506」 by 張羽(Zhang Yu)(2018)

プレキシグラス、画仙紙、墨、水、80 x 80 x 50 cm

張羽(Zhang Yu)の作品上では、西洋美術と伝統的な中国の水墨画の道が交わっています。今回展示している彼の作品は、禅や道教文化から派生した、より東洋的な芸術へのアプローチによる西洋のミニマリズムと中国のマキシマリズムの合流点です。

伝統的な素材と日常的な素材を両方とも使うことで、張羽(Zhang Yu)の実験的な水墨画と彫刻は時と共に進化します。この作品では、透明なアクリルの箱の中に何千枚もの画仙紙を重ね、そこに大きなヤカンからゆっくりと墨を注ぐパフォーマンスを行います。墨はゆっくりと紙に染み込んでいきます。そしてこのプロセスは、作品が西洋のミニマリズムにおける美の象徴である黒い立方体になるまで、果てしなく繰り返されます。

本作品は、仏教に着想を得た張羽(Zhang Yu)が生み出した数多くの作品の1つです。張羽(Zhang Yu)は、「禅、仏教、道教の教えは、(中略)人間の心も最も深遠な部分につながる道です。この道の終着点には、私たちが求めているある種の英知があり、そこに達するには(中略)平穏、簡素、明晰であることが必要なのです。」