アートスタイルとしてのアジアのミニマリズムは、西洋で知られるようになる何百年も前に遡ることができます。そのルーツは、リグ ヴェーダ(Rig Veda)として知られる古代サンスクリットの聖典です。テキストには、非実在、無限、無などの不在と無限という抽象概念に言及しており、その着想が何世紀にも渡ってアーティストや科学者を魅了してきました。
東洋哲学、特に禅仏教は20世紀初めに日本の学者である鈴木大拙を通じて部分的に西洋に伝えられ、大きな注目を集めました。このアイデアは、その後ミニマリズムやアートの歴史の重要人物となる多くのアーティストの心を捉えました。精神性、移り変わり、生命のサイクルという概念は、中国のマキシマリズムに関連するものを含め多くの現代アジア人アーティストの作品の根底にあるものです。
ウッドブロックプリント(紙)、20 x 4000 cm
中国人アーティストのタン・ピンの長さ40mのプリントは、アートサイエンス・ミュージアムのミニマリズム展の中でビジュアルおよびコンセプト両方の中心的な作品です。このラインは、アーティストが6時間にわたる一続きのアクションで木のブロックを彫ってできたものです。作品の片方の端が見える時には、もう片方の端は見えなくなっています。これは無限と無形を示唆しています。この作品はミニマリズムの美学を表象するだけでなく、中国のマキシマリズムの精神に根差した途方もない感情的なパワーを伝えています。
創作の際、タンは彫刻の作業に完全に没頭しました。「私のエネルギー、経験、アートの理解、そして内なる闘いのすべてが、パネルにナイフが突き刺さる瞬間に封印されている」と書きました。
12パーツ、33.3 × 50 cm(各)
ソン・ドンは中国人で、現代アートのアーティストであり、不変性や無常という概念に向き合うパフォーマンスや彫刻、インスタレーションを行っています。現在展示中の黒と白の一連の画像はライブ アクションを記録したものです。大きなやかんから沸騰したお湯をこぼしながら、北京の路地を歩くアーティストが表示されています。こぼれたお湯が地面に線を残し、線から立ち上る湯気が空中にたなびいています。水がゆっくり蒸発するのに対し湯気はすぐに消散し、次第にアーティストのアクションの跡がなくなっていきます。
シンプルなアクションとパフォーマンス後に何も残らないという事実が、ミニマリズムやアンナ・ハルプリン(Anna Halprin)とサイモン・フォルティ(Simon Forti)の作品に見られる無駄をそぎ落としたナチュラル ムーブメント スタイルを表現しています。また、今回の展示の最初のギャラリーで見られるチャン・ユー(Zhang Yu)の作品も連想させます。
ビデオ、シングルチャンネル、4:3フォーマット、カラーおよびサウンド(ステレオ)、40秒(ループ再生)
台北を拠点とするアーティストのチャーウェイ・ツァイは、極めて私的で時に政治的なパフォーマンスを含む芸術作品を制作します。「Circle」という作品の中で、彼女はまず「ensō」(墨で描いた円)を描きます。これは今回の展示で複数のアーティストが創作している円の構造物と共鳴しています。ツァイは、氷の塊の表面に筆で滑らかに描いていきます。氷の表面が溶けていくにつれて、墨のペイントがゆっくりと膨らみ、流れていきます。その後跡形もなくなります。ビデオがループ再生されることで、すべてのプロセスが無限に繰り返されるように見えます。「ensō」は森羅万象と虚空の象徴であり、「無」です。そこからは、物事が作られ、時が経ち、そしてまた始まりを迎えるだけの人間存在の無常を読み取ることができます。