1950年代に都市人口が急増すると、政府は都市開発の推進に積極的に取り組むようになりました。スラム街や郊外住宅地が取り壊され、代わりに鉄筋コンクリートを使用した機能主義の大規模な住宅が建設されたのです。こうした「ブルータリズム」建築様式の建物は、外観が抑圧的で、住宅の品質低下を招きやすいとして非難を浴びました。
これをきっかけに、若手建築家や都市計画家は、インフレータブル素材(エアーオブジェ)を使用した仮設建築物やモバイル建築物の可能性を探り始めました。この展示セクションでは、1960年代に新素材や宇宙技術の開発が進んだことで、前衛建築家が建築の恒久性に疑問を抱き、インフレータブル素材を取り入れた建築構造を模索するようになった過程を示しています。こうした前衛建築家は、柔軟なモバイル構造を特徴とする一時的な居住環境に理想を見出しました。インフレータブル素材を使用した「インスタント都市」や「バブルの城壁」の発想は、1960年代の環境保全運動やヒッピー文化の後押しを受け、広く普及していきます。1970年代に入ると、1970年の大阪万国博覧会などを皮切りに、インフレータブル建築の概念は一般大衆にも広く知られるところとなりました。
出展アーティスト: アント・ファーム、ザ・イエス・メン、建築家 沖種郎、グラハム・スティーブンズ