人類はその歴史を通して「エアバルーン」に魅了され続けてきました。
『バルーンフィーバー』展は、エアオブジェがどのように人々の心を魅了していったのかを、作品を通して探る展示です。18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパを中心に熱狂的なバルーンフィーバーが起こり、熱気球の公開飛行には何千人もの観衆が押し寄せました。熱気球が空高く舞う様子は、これまで大衆が持っていた「可能性」の概念を大きく覆しました。これをきっかけに、新しい移動手段や通信技術が次々に発案されるようになり、科学技術が大きく発展したのです。
1960年代後半にも、再びエアオブジェが流行し、人々の想像力を掻き立てました。当時は冷戦を背景に、欧米で社会不安が広がり、政治情勢を懸念した芸術家や建築家が「社会の理想の姿」を探し求めたのです。新しい合成素材やインフレータブル技術の開発は、建築や構造物に新たな時代をもたらしました。それまでの堅固な構造に代わる「建築の流動性」が追求され、時を超えて残る芸術より「刹那の出来事」が注目されるなど、より流動性の高いノマド的な社会が模索されたのです。
出展アーティスト: アント・ファーム、ザ・イエス・メン、沖種郎アーキテクツ、グラハム・スティーブンズ