ハイパーリアリティ:
オラファー・エリアソン、マリーナ・アブラモヴィッチ、アニッシュ・カプーア

PG (一部過激な描写あり)

世界を代表する現代彫刻家のアニッシュ・カプーアが手がける初のVR作品『落ちよ、体内へ』(原題:Into Yourself, Fall、2018年)では、自らの体内に落ちていくような仮想体験を通じて、人体の神秘に迫ります。

このカスタム仮想空間をデザインするにあたり、カプーアは、大きな影響を与えてきた独自の彫刻手法と最先端のVR技術を活かして、異領域における物質性の探究を試みています。体内の肉や筋肉といった組織を抽象的に描き出し、触覚と超越感覚を呼び起こす体験をデザインしました。息子のイシャン・カプーアがサウンドトラックの作曲を手がけた『落ちよ、体内へ』は、迷宮のような壮大な自己の内面を仮想現実に描き出し、鑑賞者をアーティスト自身の身体感覚へと誘います。

PG

革新的なパフォーマンスアートで知られるマリーナ・アブラモヴィッチのVR作品『海面上昇』(原題:Rising)では、アブラモヴィッチと面と向き合う親密な仮想現実を体験することができます。

アートとアクティビズムを融合したこの作品は、気候変動の恐ろしさを見事に伝えるものです。ガラスの水槽の中から、アブラモヴィッチは鑑賞者を招き寄せます。彼女は腰まで水に浸かっており、次第に水位が上昇して彼女の喉元に迫っていきます。この水位の上昇は、海面上昇のシンボルとして、仮想現実の中のアブラモヴィッチをじわじわと命の危機に晒していくのです。招きに応じて鑑賞者がアヴラモヴィッチに触れると、南極の氷が融解し、派手な音を立てて崩れ落ちるスリリングなシーンへとワープします。こうしたバーチャル体験を通して、アブラモヴィッチは鑑賞者に周りを取り巻く世界を改めて見直し、一見なにげない選択が命を左右することを訴えているのです。

オラファー・エリアソンの『虹』(原題:Rainbow)は、儚い虹の光景を通じて人と自然の距離をより近づける、思慮深さと遊び心を兼ね備えた作品です。

エリアソンは、流れる水のカーテンに虹が架かったり、消えたりする没入型環境の中で、鑑賞者がVRコントローラーを使って水と戯れ、虹とインタラクティブに関わることができる世界を作り出しています。この仮想現実の中で、鑑賞者は水の下を歩いてずぶ濡れになり、雫が滴る音に耳を傾けたり、カラフルな光のプリズムと戯れながら、魅惑的な幻想の世界を五感をフルに使って体験できます。