展示
『Hope from Chaos:
Pandemic Reflections』展
『Hope from Chaos: Pandemic Reflections』展は『Outbreak: Epidemics in a Connected World』と題された、無料でご覧いただけるイントロダクションから始まります。世界的に名高いスミソニアン協会によるこの展示は「ワンヘルス」という概念に焦点を当て、人間・動物・環境の健康はつながっている、という考え方に目を向けるものです。
続く『Hope from Chaos』では、新型コロナウイルスのパンデミック渦中での仕事や生活について洞察するアーティストたちのストーリーや慣習との、深淵な示唆に富んだ、瞑想的で、個人的な出会いを提供します。
そこから見えてくるのは、ウイルスの病理と、私たちにとって馴染み深いものになってしまった孤立状態や、さまざまなケアの儀式です。新型コロナウイルスに感染するという困難や、アーティストたちがそうした困難を乗り越えるのに役に立った儀式や慣習について考える機会を与えてくれる今回の展示は、私たちがこのパンデミックの最中に抱いた思いや感情に目を向け、理解する助けになるかもしれません。
今回の出展アーティスト、Heman Chong(シンガポール)、Cao Fei(中国)、Nonzuzo Gxekwa(南アフリカ)、Luke Jerram(英国)、Ivetta Sunyoung Kang(カナダ/韓国)、Eun Vivian Lee(シンガポール/ニューヨーク/韓国)、Pierre le Riche(南アフリカ)らの作品は、南洋理工大学(シンガポール)のマテリアルサイエンティストらによるプロトタイプと共に展示されています。
入場時間
(最終入館時間は午後6時)
チケット料金
展示概要
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『Outbreak: Epidemics in a Connected World』を見る
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Cao Fei
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Luke Jerram
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Heman Chong
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Nonzuzo Gxekwa and Pierre le Riche
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Eun Vivian Lee
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Ivetta Sunyoung Kang
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南洋理工大学
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展示イントロダクション『Outbreak: Epidemics in a Connected World』を見る
スミソニアン協会のエキシビジョン『Outbreak: Epidemics in a Connected World』は、2018年に米国の国立自然史博物館でお披露目されたより大規模な展示を、カスタマイズできるDIYバージョンにしたものです。無料でご鑑賞いただけるこのセクションでは、インフォグラフィック、インタラクティブメディア、3Dプリントで制作されたモデルなどを使い、新しく出てくる感染症やパンデミックの危険性について掘り下げていきます。「ワンヘルス」と言われるように、人間・動物・環境の健康は否応なしにつながっているということ。また病原体が野生生物から人間へと広がっていく場合の、その拡大の仕方。そしてなぜ一部のアウトブレイクがエピデミックになるのか。詳しい内容を会場でぜひご覧ください。展示イントロダクション
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「Outbreak Do-It-Yourself Exhibition」アメリカ、スミソニアン協会によるエキシビジョン
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Cao Fei
中国のコンテンポラリーアーティストCao Feiも、私たちの多くが経験したのと同じように、2020年4月から6月のサーキットブレイカー期間中、家族で暮らすシンガポールのアパートメントに引きこもっていました。 この時に思いついたのが、日常生活の経験を活かし、突然彼女の暮らしに欠かせないものになったアイテムを使ってアートワークを作成するというアイディアでした。動画、ドローイング、写真、オブジェクトを使ったこのマルチメディアインスタレーションは、集団で引きこもることの心理的影響を掘り下げ、日常とはかけ離れた状況の中で送った日々の暮らしの現実を振り返るものになっています。展示作品
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Cao Fei「Isle of Instability」(2020-2022).
Commissioned by Audemars Piguet Contemporary. Courtesy of the artist, Vitamin Creative Space and Sprüth Magers.
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Luke Jerram
英国のアーティストLuke Jerramが、世界の科学界・医学会がパンデミックとの闘いに奮闘していることに敬意を表して制作したのは、ガラスの立体作品、コロナウイルス「COVID-19」です。コロナウイルスについての最新の科学データと図表を使ってモデルにし、医療の現場や科学研究に採用されているガラス製品によく使われているのと同じ素材や吹きガラス技術で制作しました。ビデオドキュメンタリーでは、2020年11月にCOVID-19の検査で陽性となった自身の経験と、それが「Oxford AstraZeneca Vaccine」と題された次の作品の制作にどうつながっていったのかも明かしています。展示作品
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Luke Jerram「Coronavirus – COVID-19」2020, ガラス立体作品.
Courtesy of Luke Jerram.
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Luke Jerram「Oxford AstraZeneca Vaccine」2020, ガラス立体作品.
Courtesy of Luke Jerram.
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Heman Chong
シンガポールのサーキットブレーカーは、突然、しかも前例のない形で実施され、多くの人々に大きな不安をもたらしました。そうした不安になんとか対処しようと、人々が日々の雑務などに目を向けていた頃、絵を描き続けていたのがアーティストのHeman Chongです。彼は毎日キャンバスに向かい、自身の過去の作品の上に次々とハザードテープのモチーフを描いていきました。56作品から成るこのシリーズは、彼の12年間の業績を改めて見直すものにもなっています。シリーズ内の絵画には、すべて同じ手法とパターンが使用されています。同じサイズのキャンバスを使い、毎日絵を描くという同じ習慣を続け、これまでの作品が同じようにアップサイクリングされているのです。展示作品
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Heman Chong「Circuit Breaker Paintings」2020.
インスタレーションビュー、アートサイエンス・ミュージアム(シンガポール)2022年
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Heman Chong「Circuit Breaker in Singapore (Day 23) 29.04.2020
(Old Airport Road Food Centre) Walk 10 of 23 (Ambient Walking)」2020.Courtesy of the artist and STPI — Creative Workshop & Gallery, Singapore.
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Heman Chong「Circuit Breaker in Singapore (Day 45) 21.05.2020
(Blk 19 Upper Boon Keng Road) Walk 19 of 23 (Ambient Walking)」 2020.Courtesy of the artist and STPI — Creative Workshop & Gallery, Singapore.
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Nonzuzo Gxekwa and Pierre Le Riche
「The Mask Project」は南アフリカのアーティストNonzuzo GxekwaとPierrele Richeのコラボレーションで、2020年に南アフリカで実施されたロックダウン中に始まったプロジェクトです。世界的にも特に厳しいロックダウンの最中に、2人のアーティストはリモートで協働し、今やどこにでもある医療用マスクにアフリカ文化の装飾的な要素を組み合わせて、一連のアート作品に仕上げました。明るい色のテキスタイルやファブリックを使ったマスクを着けたアフリカ人男性・女性を写真におさめた作品は、この激動の時代におけるアフリカのアートの、レジリエンスと創造性を示すものになっています。展示作品
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Nonzuzo Gxekwa「Untitled 02」2020, part of The Mask Project.
Courtesy of the artist and THK Gallery, South Africa.
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Nonzuzo Gxekwa「Untitled 06」2020, part of The Mask Project.
Courtesy of the artist and THK Gallery, South Africa.
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Nonzuzo Gxekwa「Untitled 04」2020, part of The Mask Project.
Courtesy of the artist and THK Gallery, South Africa.
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Pierre Le Riche「Untitled II (pride mask in fuchsia)」2020, part of The Mask Project.
Courtesy of the artist and THK Gallery, South Africa.
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Pierre Le Riche「Untitled VI (mask in yellow, blue and green)」2020, part of The Mask Project.
Courtesy of the artist and THK Gallery, South Africa.
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Pierre Le Riche「Untitled IV (mask in blues)」2020, part of The Mask Project.
Courtesy of the artist and THK Gallery, South Africa.
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Eun Vivian Lee
シンガポール/ニューヨークを拠点とするコンテンポラリーアーティストのEun Vivian Leeは、2020年1月から、貝殻から作られた顔料と10メートルの紙を使ったインスタレーション「Diary of 2020」の制作に取り組み始めました。当初は彼女のこれまでの作品と変わらぬ着想で始まったこのプロジェクトは、パンデミック中に感じた先の見えなさや恐怖に対して、彼女が日々どう反応したかを反映するものへと発展していきます。 アーティストEun Vivian Lee自身と彼女の作業プロセスを掘り下げた、短いドキュメンタリー動画も併せて展示しますので、ぜひご覧ください。
「Diary of 2020」は非営利団体Art Outreach SingaporeのHEARTHアートプログラムに初出展された作品です。マリーナベイ・サンズのコミュニティエンゲージメントプログラム、Sands Caresは、Art Outreach Singaporeを支援しています。
展示作品
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Eun Vivian Lee「The Diary of 2020」2020.
Exhibition view at Hearth Art Space, Art Outreach SG October 2021. Courtesy of the artist and Art Outreach SG.
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Eun Vivian Lee「The Diary of 2020」2020.
インスタレーションビュー、アートサイエンス・ミュージアム(シンガポール)2022年
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Ivetta Sunyoung Kang
ジャンルにとらわれず活躍している韓国/カナダのアーティスト、Ivetta Sunyoung Kangは、パンデミックが始まってから今まで、私たちの多くが過ごした、周りの世界から隔絶された1人の時間について考察し続けています。この先が見えない混乱の時期に、不安を和らげる新しい方法を模索し続けているのです。「Tenderhands」は、彼女が世界的なロックダウンの開始以来、毎日ポストイット®のメモに書き続けてきた、インストラクションの数々から成る作品です。この作品はそこからインスタレーション、Instagramライブ、動画、サブスクリプションベースのメールプロジェクトなど、さまざまな形式に形を変えて続いています。今回の『Hope from Chaos』では、ビデオパフォーマンスの形で、集中して心を落ち着かせるためにIvetta Sunyoung Kangが考案した、手だけを使うプロセスをいくつか展示いたします。展示作品
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Ivetta Sunyoung Kang「Tenderhands Video Performance Instruction #39」のスクリーンキャプチャー, 2020-現在.
Courtesy of Ivetta Sunyoung Kang.
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南洋理工大学、シンガポール
Covid-19のパンデミックは急速に広がり、ウイルスの拡散を防ぐのに重要な役割を果たすマスクは、私たちの生活に欠かせないものになりました。そんな中、2021年6月に、シンガポールの南洋理工大学のマテリアルサイエンティストチームが開発したのが、細菌、ウイルス、粒子状物質の99.9%をカットするフィルターを備えた、再利用可能な「ナノテクマスク」です。フィルター効率は通常のN95マスクを上回るうえ、新しい技術の力で、10回以上洗って再利用できるマスクとなっています。またこのチームは、マスクにスプレーすると殺菌効果が長時間持続する、抗菌ナノ粒子ソリューションを設計・開発し、特許も取得しており、市民の保護に役立つと期待されています。このコーティングは、表面が硬いものにも柔らかいものにも使え、多孔質素材にも無孔素材にも簡単に施すことができるということです。ナノテク微生物マスクの開発
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誘電体ナノファイバー生地で作られたN95認定マスクと、銅ナノ粒子が入ったボトル
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関連アクティビティ
- ガイドツアー
- 注目のアーティスト講演
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『Hope from Chaos』ガイドツアー
孤立状態やケアの儀式を通して、ウイルスの病理に対する知識を深め、アーティストがパンデミックに対処する様を肌で感じましょう。
『Hope from Chaos: Pandemic Reflections』は、鑑賞者が現代に生きる意味を模索理解し、問いかける原点となり、
このパンデミックの最中に抱いた思いや感情に目を向けよと提案します。
英語ガイドツアー参加料金は1名様あたり5シンガポールドルです。
各展示のチケットをお持ちのお客様は、ボランティアガイドによる北京語ガイドツアーを無料でご利用いただけます。
ツアーの日程と詳細についてはツアーページをご覧ください。 -
ウン・ビビアン・リーによる注目のアーティスト講演 『Diary of 2020』
ギャラリー内で少人数で開催されるウン・ビビアン・リーが『Diary of 2020』について語るアーティスト講演にご参加ください。『Diary of 2020』は、現在、『Hope from Chaos: Pandemic Reflections』で展示されています。
同氏のアーティストとしてのキャリアの中で最も大がかりな作品『Diary of 2020』は、ビビアンの日々の心の状態とパンデミック中に参加した一連のイベントについての記録です。当初構想されたアイデアは同氏のほかの芸術的試みと同様だったものの、後にプロジェクトに発展した本作品。そこには、パンデミックへの不安に対する制作者の日常的な付き合い方が反映され、制作者自身とその人生を本人がコントロールする空間となりました。
このアーティスト講演は、この展示の背景紹介となるアートサイエンスミュージアムエデュケーションスペシャリストによる『Hope from Chaos: Pandemic Reflections』ツアーに続いて開催されます。
ツアーの日程と詳細についてはツアーページをご覧ください。3月15日(日) | 午後4時~午後5時15分