新しい文字のスタイル


20世紀から21世紀の変わり目から、アーティストたちはそれぞれ独自の書体デザインやアートの手法を生み出すようになりました。その多くは、アラビア書道やスプレーペイントの技法に影響を受けていました。 ストリートアートは進化し続けていますが、共同で作る文化や共有された基盤を維持しながら、各世代のアーティストはそれぞれのスタイルを定義、再定義していくという原則に今でも従っています。この頃、ストリートアートという文化は、大陸を超え世界中へと広がってゆきます。この新しい文化に対する世間の反応はさまざまで、中には批判的な声もあります。
見どころ
TarekBenaoum
 
Tarek Benaoum(1978年生まれ)

La quête de l'immortalité, Gilgamesh
(Gigamesh: The Quest for Immortality)
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作

Benaoumが、グラフィティアートの虜となったのは14歳の頃。そのころからスプレーペイントを使った技法を独自で勉強していました。そんな中、彼はカリグラフィー(書道)と出会います。彼が「文字を書く」という新しい情熱に出会った瞬間です。その後、“Toulouse Scriptorium”と呼ばれる1968年に設立された書道やタイポグラフィーを専門的とする学校へ入学します。そこで彼は、言葉やフレーズ、引用文、詩、格言などの一部分だけを使った新しい自己表現の方法など、いろいろな模索を重ねました。彼が探求する固定概念にとらわれない革新的な”jamming(即興アート)”は、”calligraffiti(書道的なグラフィティ)”とも呼べるでしょう。

Eko
 
Eko Nguroho(1977生まれ)

Garden Full of Blooming Democracy
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作
 

Nugrohoは、インドネシアの美術学校で学び、その作品はギャラリーや美術館で展示もされています。そんな彼ですが、実はアーバンアートにも深いつながりがあります。彼は作品の中で、バティックと呼ばれるろうけつ染めなどの、インドネシアの伝統芸術と、世界のポップカルチャーを融合させることで有名です。絵画、彫刻、刺繍、タペストリー、展示品だけでなく、ストリートアート、アニメーションやビデオなど、さまざま分野で幅広く活躍するアーティストです。

RemiRough
 
Remi Rough(1971年生まれ)

Concise
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作

Remi Roughは、ロンドンで有名な”post(ストリートを卒業した)”グラフィティアーティストです。1984年に、公共の壁や電車などに作品を描く典型的なグラフィティアーティストとして、ロンドン南部を拠点に活動を開始しました。現在では、活動の場をストリートからキャンバスに移し、定期的に展示会を開催しています。構成にこだわった抽象的な彼のスタイルは、目で楽しむ俳句と呼ばれることも。彼は、独自のアートスタイルを変えることなく、活動の場を屋外から屋内のスタジオへと移すことに成功したアーティストです。

Rero(1983年生まれ)
 
Rero(1983年生まれ)
One More Picture On My Phone、2017年
デジタルプリント壁紙
アーティスト提供
Reroは、ストリートアートと現代美術の境界線を行き来するようなスタイルで有名なフランス人アーティストです。彼の作品の特徴は、大きな文字でメッセージを描き、そして線であえて消す、というもの。そこに込められた意味は、一目で理解できる気になりますが、後から多くの疑問が浮かんできます。ストリートアートの世界に身を置きながら、その世界に対して彼が感じる矛盾を、アーティスト仲間に投げかけているのです。

Tanc(1979生まれ)
 
Tanc(1979年生まれ)
無題、2015年制作
キャンバスにアクリル絵具
マグダ・ダニス・ギャラリー提供
マグダ・ダニス・ギャラリー提供
 
Tancの通称で知られるアーティストTancrède Perrot。グラフィティと共に育った彼は、早い時期にストリートアートの儚さに気づきました。描いても、いつ消えてしまうか分からない儚さ。そこから彼の中では、作品を完成させることよりも、描くという行為の重要度が高くなっていきました。彼の作品の特徴は、線が交差したり、織物のように重なり合ったりするデザイン。これは、彼のミュージシャンとしてのアイデンティティーにもつながっています。音楽やそのリズム、また線や色使いにフォーカスし、ストリートアートの今までの美的探究スタイルを一新。作品の命は一時的なものかもしれないという事実を理解したうえで、作品に命を吹き込む。そんなスタイルを確立しています。