そして羽ばたく


新しい才能が次々と誕生する中、ストリートアートの世界に二つの進化を遂げます。一つは、アーティスト毎の作風がますます多様化したこと、そしてもう一つは彼らの表現方法の幅が広がったこと。これらの進歩は、古い建物の再利用に伴い、そこをキャンバスに大作を手掛ける機会が増えたのが引き金となっています。

巨大キャンバスに没頭し、材料を切ったり、貼ったり、テキスタイルやステンシルを使用したり、すべての工程の細部までこだわって創り上げられる作品。それは、印象深く、思わず足を止めてしまうものばかりです。さまざまな要素も積極的に取り入れるけれども、基本的には街自体から得たインスピレーションを作品作りに反映させる。この新しいアプローチは、ストリートアートの将来性について疑問視する声に反発しているかのようです。

ストリートアートの美と伝統的な慣習を積極的に組み合わせることによって、ユニークで革新的な作品が次々と生まれています。 

見どころ
フェリペ・パントン(1986年生まれ)
 
フェリペ・パントン(1986年生まれ)

Chromadynamicap
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作

12歳でグラフィティアートを始めたパントンは、スペインのバレンシア大学の美術学部において学士号を取得。彼の鮮やかな色を使う作風は、ストリートアート及び現代アーバンアートの最前線にあります。強烈な色使い、シャープな線、そして大胆な形を使った彼の作品は、オプ・アートやキネティック・アートの歴史に強く影響を受けています。派手な80年代を思い起こさせるようなアバンギャルドなスタイル、それはまさに、パントンが確立した独特のアートスタイルです。鮮やかすぎる色彩、シンセポップ音楽、テレビのSMPTEカラーバーのイメージが思わず頭に浮かんできます。

Sheryo-and-yok
 
Sheryo & Yok (それぞれ1984年生まれ、1978年生まれ)

Outlaws of Style
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作

Sheryoは、ブルックリンに拠点を置くシンガポール人アーティストです。2005年からストリートアーティストとして活動しています。彼女は作品で、現代人のライフスタイルとその儚さ、そして人がそれに対してどんな感情、不満を抱くのかを、調査・分析し記録しています。Yokはオーストラリアで生まれ、アメリカのアニメ番組「レンとスティンピー」とスケートボード・アートを観て成長しました。これは、彼の作風に大きく影響を与えています。シンガポールのカーティン大学で美術学部の学士号を取得後、もっと広い世界をみたいと思い立ちます。メルボルン、シドニー、バンコク、香港、台湾、上海、ニューヨーク、東京、ロンドンといったさまざまな場所を訪れ、展示を行ってきました。
ヴィールス(アレクサンドル・ファルト、1987年生まれ)
 
ヴィールス(アレクサンドル・ファルト、1987年生まれ)
Shanghai Carved Wall、2012年
上海市内の作品の写真
アーティスト提供
写真:アーティスト提供
 
ヴィールスにとって、ストリート(街)は表現の場であり、インスピレーションを得る場でもあります。壁や、使われなくなったポスターの一部にエッチングを施し、顔や風景や文字を浮かび上がらせるのが彼の作品の特徴です。彼の作品によって、だれも見向きもしなかった壁に、命が吹き込まれます。その場所に存在意義を持たせ、同時に美的センスも取り入れる。彼の作品にとって、その場所のメッセージ性は大切な要素なのです。 

Swoon(1978年生まれ)
 
Swoon(1978生まれ)
Zahra、2017年制作
プリントにアクリルで強化したマイラー使用
マグダ・ダニス・ギャラリー提供
写真:アーティスト提供
 
Swoonの経歴は、ニューヨークの街からはじまりました。プリントした紙を壁に貼った作品が彼女の特徴です。また、再利用された建物の壁に、古典的な彫刻の技術を取り入れたりもしています。彼女は、さまざまな要素も積極的に取り入れていますが、基本的には街自体から得たインスピレーションが作品作りに反映しています。多くの作品には、無名の人物が描かれており、社会問題に積極的に向き合う彼女にとっての、ヒューマニズムの象徴ともいえます。