「一つひとつの業務で着実に、データがマリーナベイ・サンズに変革をもたらしています」
マリーナベイ・サンズほどの規模の統合型リゾートでは、客室を整えるという一見シンプルな作業でさえ、全1,850室にも及ぶきわめて複雑なオペレーションとなります。
稼働率が常に100%に近い状態の中、チームは通常、数時間足らずでほぼすべての客室を清掃し、次のお客様をお迎えする準備を整えなければなりません。そのため、緻密な連携が不可欠となります。
現在、通常の清掃から高所のほこりを払うといった定期的なディープクリーニングに至るまで、あらゆる作業の進捗はライブダッシュボード上で注意深くモニタリングされています。遅延や無駄な移動を防ぐため、3棟のホテルタワー全体で従業員が最適に配置されています。
2025年後半に稼働を開始したこのシステムにより、現場のデータに基づいて状況を的確に把握できるようになりました。
スーパーバイザーは清掃が必要な客室を常に把握できるため、100名を超える客室係と連携し、お客様をお迎えする準備を迅速に整えることができます。
「当ホテルには、さまざまな客室カテゴリーがあります。そのため、このイノベーションには、データを収集するだけでなく、そのデータをいかに構築し、実際の運用に落とし込むかということまでが求められます。データを明確で実践的なインサイトへと変換することで、チームは業務効率を向上させることができます。時間にゆとりが生まれることで、従業員はサービスのパーソナライズや、ラグジュアリーな旅をされるお客様とより深いつながりを築くことに注力できるようになるのです」と、マリーナベイ・サンズの財務計画・分析担当バイスプレジデントであり、IGNITEの創設メンバーでもあるAlok Atriは語ります。
データの有効活用という課題
近年、デジタル化を推進してきた多くの企業が実感しているように、日常業務からデータを収集し分析することは、最も困難な課題の一つです。マリーナベイ・サンズにとっても、それは例外ではありません。
カスタマーエクスペリエンス(CX)分析およびプロセス改善担当エグゼクティブ・ディレクターのChristopher Tohは、ライブダッシュボード用にデータをリアルタイムで収集するだけでなく、その正確性も確保するよう各部門に働きかけたことを振り返ります。
運用を担う従業員を指導することで、情報を正確に記録し、現場の状況を明確に把握することが可能となります。
プロセスの革新を担うTohとそのチームは、マリーナベイ・サンズのあらゆる部門のメンバーと連携し、生のデータを実用的な情報へと変換することで業務改善を図っています。
IGNITE(Identify:特定、Generate:創出、Navigate:誘導、Initiate:着手、Transform:変革、Evaluate:評価)と呼ばれるこの取り組みは、近年の現場主導型イノベーションの鍵となっています。成功の鍵を握るのは、ビジネスへの深い理解です。背景情報の伴わないデータは、ほとんど意味を持たないからです。
そのために、データアナリストのチームがマリーナベイ・サンズの多様なシステムから抽出した生データの整理を支援しています。一方で、そのデータが「本物」であることを見極めるのに現場マネージャーの鋭い視点が欠かせない、とTohは語ります。「データを扱う上で、品質は何よりも重要です。質の悪いデータを集めても、無意味な結果しか得られません。」
マリーナベイ・サンズは、データをイノベーションに活用する上で「データレイク」への投資が必要不可欠であると考えています。「データレイク」とは、統合型リゾートの社内データを一元的に管理する安全なリポジトリを意味します。
これを高度なデータ分析に活用することで、マネージャーは日々、より的確な意思決定を行うためのインサイトを得ることができます。10年以上前に構想されたこのデータリポジトリは現在、マネージャーが業務状況を明確に把握できるようにすることで、新たなイノベーションを促進する役割を担っています。
「こうしたデータドリブンな姿勢がもたらした成果は今日、明白に表れています」とTohは述べています。日常業務の円滑化やタスクにかかる時間の短縮など、データ分析がもたらすメリットを実感したチームは、さらなる改善を求めてくることが多いと彼は述べています。
生産性のその先へ
データは、プロセスや生産性の向上にとどまらず、さらに多くの価値をもたらします。運用データから得たインサイトをもとに、チームはより的確な計画を立案することができます。たとえば、客室にご用意するフルーツバスケットの数や種類を、お客様の消費傾向やお好みに合わせてアレンジすることが可能になります。また、マネージャーが繁忙期などに必要な人員を計画する際にも、こうしたデータが助けとなります。
「絶え間ないイノベーション」が単なるスローガンにとどまらないマリーナベイ・サンズにとって、こうした向上は重要な意味を持ちます。これらは、世界で最もアイコニックな旅の目的地の一つとして、お客様を魅了し、ワールドクラスの体験をご提供するための鍵となるものです。
「絶え間ない向上心は、チームが常に次を見据えていることを意味しています」とAtriは語ります。
そして、「お客様のニーズ、年齢層、季節の変化に合わせて、私たちも進化しなければなりません」とも言います。「お客様一人ひとりに寄り添った心躍る旅を、マリーナベイ・サンズが常にご提供できるようにするには、どうすればよいか。その答えは、絶え間ないイノベーションと常に進化し続けること、そして、未来の課題に対する答えを、すでにすべて持ち合わせているなどと決して過信しない姿勢の中にあります。」