イタリアの銀細工メーカーZanettoの洗練されたデザインはモダンに見えますが、約60年前に開発された伝統技術を用いて作られています。
鏡面仕上げのピカピカに光るゴールドとシルバーが、エッグシェルブルーのシルクが織りなす層に包まれ、色鮮やかなエナメルやクリスタルが小粒の真珠が付いたデコレーション用の洋ナシとともに光っています。この光景は高級ジュエリーのディスプレイに似ていますが、実際はZanettoの最新カタログに掲載された、ハンドメイドの高級テーブルウェアやホームデコレーションです。
ベルナルド・ザネット氏が1963年に創設したZanettoは、今でもベニスに近い故郷のパドアで営業しています。あまり知られていませんが、パドアには中世から続く金細工や銀細工の豊かな伝統があります。同氏はこの地で、花瓶、ボウル、カトラリーといった日用品に洗練されたアレンジを加えることで評価を得ました。Zanettoは1970年代までに前衛的なデザインにシフトし、金属を使った実験を行い、自社の工具を使ったハンマー仕上げの真鍮作品を発表しました。
現在はベルナルド氏の息子、エンリコ氏の下、20名の職人チーム(エンリコの息子パオロを含む)が真鍮、銅、青銅、銀、金を使用して他にはない作品を手作りしています。その多くは、Zanetto独自の珍しい表面仕上げが特徴です。「私たちは、均一な形、完璧なエッジ、凹凸のないなめらかな表面、均一な厚さの銀メッキを施した作品を製作しています」とエンリコ氏は言います。また、Zanettoは宝石、家具、アートにも展開しており、エンリコ氏が製作したスタイリッシュな女性をかたどった像「La Femme」は、権威あるアーゾロ・ビエンナーレ国際芸術賞に入選しました。
「不完全なところが手作りと機械製造の違いです。私たちの作品は、年月を経て使用されるほどに美しくエレガントになります」
この哲学が表れているのが、マリーナベイ・サンズとの最新のコラボレーションです。オブジェのような真鍮のフルーツボウルやカクテルセットなど、さまざまなハンマー仕上げの作品が、統合型リゾートが豪華に改装した超高級なザ・パイザコレクションに華を添えています。
エンリコ氏の娘でありZanettoのブランドマネージャーを務めるジュリア・ザネット氏は、「クライアントとは、美に対する情熱を共有しています」と話します。
彼女はザネット一族が運営するパドア工房の内部を、特別に見せてくれました。
クリエイティブな家族
父のエンリコが会社に加わったのは1983年です。父はCEO兼デザイン長として、Zanettoの経営のあらゆる側面に深く関わっています。工房から出荷される前には、すべての製品が父による最終承認を受けなければなりません。
(右側イメージ)父がZanetto Arteの一環として初めて手掛けた作品「La Femme」は、女性の持つエネルギーを象徴したもので、機能的でありながら芸術的な作品です。フルーツや花を置いて使うこともできますが、アートとして飾ると最も美しく見えます。
Zanettoのプロセス
父はすべての特注品を自らスケッチし、クライアントと一緒にデザインを改良しています。マリーナベイ・サンズのザ・パイザコレクションでは、磨き仕上げの真鍮とウォルナットの台座が特徴の高級カクテルセットをデザインしました。この輝きと温かみのバランスには、Zanettoのディテールや職人技に対するこだわりが表れています。
黄銅板から始まり、切削、ハンマー加工、磨きといった複数段階を経る中で、Zanettoの作品にはどれも20名ほぼすべての職人が関わっています。