シンガポールを代表する魅惑のカクテル「シンガポールスリング」

ディナー前のアペリティフに、あるいは今晩を締めくくる一杯として。旅先でその地にちなんだカクテルを嗜むのは格別なものです。そして、シンガポールを代表するシンガポール生まれのカクテルといえば、世界的に有名なシンガポールスリング。ドライジンにチェリーブランデーやパイナップルジュースを加えた、濃厚なフルーツの味わいがいかにも南国を彷彿とさせるこのカクテル、実は独立共和国としてのシンガポールより古い歴史を持っているカクテルなのです。この記事では、そんなシンガポールスリングの魅力と誕生秘話についてご紹介します。
ロングバーのシンガポールスリング

ロングバーのシンガポールスリング


カクテル「シンガポールスリング」の誕生秘話

先ほど書いたように、シンガポールスリングの歴史は独立共和国としてのシンガポールそのものよりもずっと古く、1913年頃にラッフルズ・ホテルのロングバーでバーテンダーの厳崇文(Ngiam Tong Boon)が最初に作った「ジンスリング」に端を発していると言われています。ドライジンにチェリーブランデー、ライムなどのジュースを「2対1対1」の割合で加えたものがオリジナルレシピでした。伝えられるところによると、まだまだお酒が男性のものだった当事、女性にももっと気軽にカクテルを楽しんでほしい、と考えて、甘くてほんのりピンク色をした、いわゆる女性用のカクテルとして、生み出されたのだそうです。

バーテンダーはバラバラのメモ書きしか残していないので、現在のシンガポールスリングとオリジナルのスリングがどれほど似ているかを知ることは困難ですが、さまざまなバリエーションを経て現在に至っているとしても不思議はありません。



シンガポールスリングの特徴は?

その後何回も改良が加えられて、現代のパイナップルジュースなどが加えられたより南国色の強いフルーティな口あたりのシンガポールスリングが登場しました。マラッカ海峡に沈む夕日をイメージ、ということでビジュアル的にはグレナデンシロップなどで赤を表現し、パイナップルのスライスにチェリーを刺したものを飾る点では共通していますが、最近ではバーテンダーの個性によってさまざまなレシピのシンガポールスリングが考案されています。

 

1930年代の「Savoy Cocktail Book(サヴォイ・カクテルブック)」には、材料はレモン、ジュース、ドライジン、チェリーブランデー、ソーダ水と記載されています。現在のラッフルズホテルではオリジナルに近いものを出しているそうです。シンガポール航空のドリンク一覧にもシンガポールスリングがあります。


誰でも作れる? シンガポールスリングの基本レシピ

誰でも作れる? シンガポールスリングの基本レシピ

このほかにも、ジンにコアントロー、チェリーブランデー、パイナップルジュース、グレナデン、リキュールのベネディクティン、そしてアンゴスチュラビターズを隠し味に効かせた大人の味わいのシンガポールスリングが楽しめるHigh Societyや、屋上57階スカイパークCÉ LA VIで提供しているジンにベネディクティン、アンゴスチュラビターズ、チェリーリカー、グレナデンシロップ、パイナップルジュース、ライムジュースなどを加え、ソーダで仕上げた爽やかなレシピのシンガポールスリングがあります。CÉ LA VIは、今年シンガポールを舞台にしてハリウッドで大人気を博した映画『クレイジー・リッチ!』にも登場したことでも有名。クレイジー・リッチなヒロインになった気分で、シンガポールのシグネチャーカクテル片手に、360度のパノラマビューをお楽しみいただけます。
シンガポールが現代のような繁栄を迎えるよりずっとずっと前から、シンガポールの歴史を見つめつつ、まさにシンガポールそのものを象徴するように、100年以上の時間をかけて数々のバリエーションを生み出しつつ進化し続けてきたカクテル、シンガポールスリング。ロングバーのオリジナルに近いオーソドックスなレシピに立ち返るのも良し、シンガポールの「今」を表現した進化型レシピを試すのも良し。熱帯特有の夜風に吹かれながら、ぜひ最高の一杯をお楽しみください。

参考資料:

"THE BEST SINGAPORE SLINGS" by TimeOut
"10 SINGAPORE SLINGS TO SIP ON THIS NATIONAL DAY" by Lady Iron Chef