生い立ちとシェフとしてのこれまでの経験を伺わせてください。
生まれは、マレーシアのスガマト(Segamat)という小さな町です。小さな頃から、週末になると家族で周辺の町の色んなレストランに食事に行くのが楽しみでした。香港に留学した時、いくつかのレストランで バイトを掛け持ちするようになりました。レストランのスタッフ達の見事なチームプレイにものすごく感銘を受けました。そうしている内に中華料理を愛するようになり、1995年にとうとうこの業界に入ることになったのです。それ以降はシンガポールや上海の有名な中華料理レストランで何年も修行してきました。その経験を通じて、中華料理としての真髄をしっかりと残しながら、外国人にも感銘を与える、そんな新しい中華の味を編み出すことを学びました。2010年には、若いシェフたちの育成における私の努力が認められて、シンガポールレストラン協会に表彰されました。25年のキャリアの中で最も誇りに感じた瞬間ですね。
シェフの料理哲学を教えてください。
中華料理において一番重要なことは、それぞれの食材独特の味を生かすということです。つまりまずは品質の高い良い食材を仕入れること、それが第一歩です。その次は、シェフとして私の技術と想像力を最大限に発揮して、良い食材の味を引き出し、味覚と食感の絶妙なバランスを見つけ出すこと。そのためにはもちろん、常に初心を忘れず好奇心と向上心を持って、何年も修行を重ねる必要があります。
The Nestと他の中華料理レストランの違いとは何ですか?
The Nestが目指すのは、香港ならではの本格的な広東風カフェ「茶餐廳(ちゃさんちょう)」です。どの料理も新鮮な食材を使い、湯煎や炙り焼き、中華鍋を使った強火での揚げ物や蒸し煮など伝統的な中華料理の技を駆使して調理しています。
The Nestではどのようなお料理が楽しめますか? また、中でもシェフおすすめの1品はどれでしょうか。
「茶餐廳(ちゃさんちょう)」ならではの点心料理はもちろん、中華鍋を使った炒めものや滋養効果の高い中華スープに焼き肉など本格中華のほかに、豚のレバー入りクレイポットチキンや茄子と豚ひき肉のクレイポットなどがおすすめです。とてもシンプルで味わい深く、心が温まる家庭料理、それこそが私にとっての広東料理の真髄です。
お客様に喜んでいただくために特に留意していること、努力していることはありますか?
優れた料理というものは、見た目に美しく、香り高く、味わい深いものである、という言葉が中国の古い諺にあります。この言葉に従い、私たちは常に新鮮な高品質な食材を使い、ご注文を受けてから調理を始めて、出来上がったばかりの熱々の状態でお客様に給仕するよう心掛けています。それだけでなく、お料理の見た目にも最新の注意を払っています。私の愛する書道の美をお客様にもお楽しみいただけるチャンスでもあります。常連のお客様が何かのお祝いでお越しの際は、私が自ら、ご予約席のカードにイカ墨を使って中国の詩歌やお祝いの言葉を書いてプレゼントしています。こういうちょっとした個人的な気配りが、人々の思い出に一番残ると信じています。