メッセージを語るアートの誕生


1990年代、ストリートアートは大きな分岐点を迎えます。この頃、アーバンアートの表現の幅は、大きく広がりを見せ始めるのです。アルファベットに代わり、アイコンやロゴ、有名人の肖像画のようなコンセプト的なデザインがタギングに用いられるようになります。このグラフィティ文化のサイドライン的な活動をするアーティストたちは、今までのグラフィティアーティストとは異なった、一線を置いた存在となっていきます。そのテクニックは多様化し、スケートやビデオゲームといったほかの分野からもインスピレーションを得るようになります。社会問題にフォーカスするようになり、アートのメッセージ性も強くなっていきました。彼は作品に、多くの思いや疑問を込めるようになったのです。 
見どころ
Zevs(1977生まれ)

Zevs(1977生まれ)
BP liquidated logo
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作
 
Zevsは、公共のスペースが企業広告で溢れかえっていることに疑問を感じ、これらをビジュアルアートの場として取り戻そうと立ち上がりました。名前の由来は、1992年タギングの最中に、はねられそうになった電車だそうです。当時のストリートアートの世界で、ロゴのような絵柄を自分のタグとして用いるようになった最初のアーティストの一人です。そして1990年代後半、街中の路地に白いペンキで描かれたUrban Shadowsと題した作品の数々で有名になります。その後も、2001年にはVisual Attackと題した新シリーズで大きな企業広告の人物画が襲われたかのように描き足したり、また2006年にはLiquidated Logoシリーズと題し、企業の有名ロゴがまるで液化して溶け出しているかのように描き足したりと話題を呼びました。

Zhang Dali
 
Zhang Dali(1963生まれ)
破壊: 紫禁城、北京、1998年制作
写真
アーティスト提供
写真:アーティスト提供
Zhang Daliは、中国人としては珍しいグラフィティアートの作品を手掛けるアーティストです。1984年にイタリア、ボローニャ地方を旅行中にグラフィティアートの魅力に出会いました。その後まもなくして、北京で活動する初のグラフィティアーティストとして活動を始め、1995年から1998年にかけて、市内で使用されていない建物2,000か所以上に、自身の顔のシルエットをスプレーペイントで描いたことで有名です。いくつかの場所では、壁をパンチし、横顔のシルエットを浮かび上がらせたそうです。 この活動には、伝統的な古い建物を見捨て、新しいものを作り続ける、そんな社会情勢への抗議の意が込められていたそうです。 
大型三葉虫 B

インベーダー(Invader)
(1969年生まれ)
Blinky Blue, 2001年制作
モザイク
個人所蔵
マグダ・ダニス・ギャラリー提供
 
インベーダー(Invader)は、スプレーペイントで自身の名前を壁に残すという行為に、最初に疑問を投げかけた一人でした。タグを捨て、彼が自分のアイデンティティーとして選んだのは、今や名祖となったアーケードゲーム、スペースインベーダーの象徴的キャラクターでした。一個のタイルで一個のピクセルを表現したモザイクタイルアートで、インベーダーのキャラクターを完成させました。そして1996年に第一弾として、新しいトレードマークを世界中の都市に張り付けたのでした。 
シェパード・フェアリー(別名オベイ)(1970年生まれ)

シェパード・フェアリー(別名オベイ)(1970年生まれ)
Middle East Mural2009年制作
4つのキャンバスに異なる絵材を使用
Dracoコレクション
写真:Drago Publishing提供
 

別名オベイの名でも知られるシェパード・フェアリー。パンクミュージックとスケートボードが大好きな少年だった彼は、幼少期にはグラフィティアートとの接点はあまりありませんでした。1989年に、フランス人プロレスラー「Andre the giant(アンドレ・ザ・ジャイアント)」をモチーフにしたステッカーを作成。そしてこれを”視覚的反抗”と称して、この街のあらゆる場所に貼り付けていきました。以後、このキャラクターは彼のアイコン的なキャラクターとなります。このキャラクターをプリントした、特大サイズのポスターもその後制作しています。

彼は、新しい作品を街のどこかに張り付けるたび、私たちにこう訴えかけます。日常にあふれるイメージの数々(ポスターや広告など)には、何層にも折り重なったメッセージが込められており、それを読み解くには努力が必要だ、と。