コンテキストのあるアート


社会での認知度が高まり、多くのアーティストの作品が街中で観られるようになりました。新しい都市が次々と生まれ、表現する場所も増えている今、ストリートアートの分野は、大きく変わろうとしています。

自分の作品で多くの人に訴えかけようと、これまでにないスケールのキャンバスで表現を試みるアーティストたち。彼らによって、新しいテクニックが次々と誕生しています。その圧倒的なインパクトに、多くの人は思わず立ち止まり、作品に見入ります。そして、その感動をソーシャルメディアを通して、世界中の人たちと共有しているのです。

各アーティストは、それぞれ違ったスタイル、トレードマークとなるような独自のテクニックを持っています。他のアーティストとの差別化を図るために、常に新しい技法に挑戦し、現代社会の情勢にも目を向けています。時間を超越した美と強いメッセージ性で、世界に訴えかける壁は創り出されているのです。

見どころ
スピーク・クリプティック(1980年生まれ)

スピーク・クリプティック
(1980年生まれ)

A State of Decline
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作

本名ファリズワン・ファジャリ、アーティスト名はスピーク・クリプティック。シンガポール在住のビジュアルアーティストです。スピーク・クリプティックの作品は、コミックやアンダーグラウンドミュージックのビジュアル言語に影響を受けていて、その多くが人間のありように関する問題をテーマとしています。長年にわたって発展させてきたユニークな図像とキャラクターたちを用いて、現代社会そして彼自身の身近で起こっているさまざまな出来事をベースにしたストーリーを描き出しています。

Ludo
 
Ludo(1975年生まれ)

Nympheas
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作

自然生物とテクノロジーの要素を融合させた作風が特徴的なアーティスト、LUDO。目を引く緑色が、特大サイズの作品を際立たせます。植物とロボットが入り混じった世界には、ユニークな美が表現されています。素晴らしい技術、そして細かなディテールへのこだわりで、自然生物とテクノロジーを融合させ、新しい何かに命を吹き込みます。他の多くのアーティストがそうであったように、LUDOはストリート出身のアーティストです。作品の多くは、現代社会が抱える問題点やタブー、腐敗などをテーマにしています。是非を問うことなく、ただありのままをさらけだすことによって、現代社会に疑問を突き付けているのです。
YZ(1975年生まれ)

YZ
(1975年生まれ)

Empress Ngatini
アートサイエンスミュージアム館内にて制作
2018年1月制作
 
英語の”eyes(アイズ)”と同じ発音のアーティスト名を持つYZ。彼女は、「Open Your Eyes」のプロジェクト名で知られる一連のコラージュ作品で、一躍有名になりました。彼女の作品の特徴は、大きなキャンバスに描かれた白黒の顔。その多くは、歴史的な女性を題材にしています。それぞれの作品は過去を取り上げていますが、そこには時間を超越した静けさが混在しています。 墨を使って描かれた作品には、街中で見つけた材料がちりばめられていることも。細部にまでこだわって創られた彼女の作品は、精密な計算のもと、街の片隅に展示されます。彼女は自分の作品について、「クラシシズムが都市の中に溶け込んでいるのがいい」と語っています。
JR(1983年生まれ)
 
JR(1983年生まれ)
The Wrinkles of the City、2014年制作
木にラミネートしたモノクロ写真
マグダ・ダニス・ギャラリー提供
写真:ステファン・ビスイユ提供
 
JRは、「個性的で大胆なアイデアで世界を変える」リーダー的存在として、2001年にTED Prizeを受賞しました。これに応えて立ち上げたJRの参加型プロジェクト「Inside Out」は話題を呼びました。プロジェクトの参加者たちによってアップロードされた画像は、20万枚以上のポスターとなって、130か国以上のさまざまなコミュニティーで展示されています。ボザール誌の編集長、ファブリス・ブストー氏は、JRを世界が21世紀のカルティエ=ブレッソンと呼ぶアーティストだと述べています。
FAILE
 
FAILE(Patrick McNeil 1975年生まれ、Patrick Miller 1976年生まれ)
Eastern Skies、2016年制作
木のキャンバスにアクリル絵具とシルクスクリーン技法を使用
マグダ・ダニス・ギャラリー提供
写真:ステファン・ビスイユ提供
 
ブルックリンを拠点とする二人組ユニットFAILE。彼らの作品作りは、他の作品の一部を集めて一つにすることから始まります。この絵画やステンシル画、コラージュ作品などを視覚的に合体させる技法は、そこから多くの解釈を生み出すのにとても適しています。壁や店頭といった街の中で、FAILEはまるでジョークでも言っているかのような陽気な作品を通して観る人に語り掛けます。しかしその作品の裏には、社会に対しての深い疑問が込められているのです。